業務委託契約書って何?テンプレートや契約項目、注意点まで徹底解説
近年、インターネットの普及や自由な働き方の推進により、『業務委託』という仕事の形態が増加しています。
業務委託は企業間だけでなく、個人(フリーランス)とも契約されるケースが多いです。
『フリーランスとして業務委託を受けたいんだけど契約書って必要なの?』
『業務委託契約書って形式的なもの?内容の確認は必要?』
自由な契約が結びやすい反面、契約内容をめぐったトラブルが目立つようになってきました。契約後のトラブルを避けるためにも、きちんとした業務委託契約書の作成・締結が重要になります。
今回の記事では業務委託契約書の概要からテンプレートの紹介、各項目の詳細説明、締結の際に注意点まで解説します。
業務委託契約書の概要
『業務委託契約書ってそもそも何?』
『必須?任意?法律で定義されているんだっけ?』
聞いたことはあるけど深くは知らない『業務委託契約書』の基本情報を徹底的に見ていきましょう。
業務委託契約書とは
業務委託契約書‥自社の業務を外部の個人や法人委託する際に取り交わす契約書のこと。アウトソーシング契約と呼ぶこともあります。
現在、法律では『業務委託契約』という規定は存在しません。業務委託契約には請負契約、委任契約、準委任契約の3種類の民法が混在しており、いずれに該当するのか明確に区分できないモノが多いです。
契約タイプ |
内容 |
---|---|
請負契約 |
当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる契約(民法632条) |
委任契約 |
当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約(同643条) |
準委任契約 |
当事者の一方が法律行為でない事務の委託をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約(同656条) |
合わせて読みたい:【業務委託向け】請求書の書き方を項目ごとに解説!注意点も紹介 | MailMate
雇用契約との違い
『んー業務委任契約についてなんとなくわかったけど雇用契約とは何が違うの?』
雇用契約の民法上の定義を見ていきましょう。
契約タイプ |
内容 |
---|---|
雇用契約 |
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる(民法632条) |
つまり、雇用契約は、労働に対して報酬を支払う契約といえます。
業務委託契約 |
雇用契約 |
|
---|---|---|
報酬の対象 |
成果物の完成や業務の遂行 |
労働 |
委託者と受託者の立場 |
対等 |
委託者が上(受託者に指揮や命令) |
安全配慮義務 |
無し |
あり |
業務委託契約書の目的
先ほども述べた通り、業務委託契約書は法律で定められていません。つまり、委託者と受託者の双方の合意があれば契約の締結は可能。書類の作成は必須ではありません。
しかし、書類を交わさず『口約束』で契約するとどんなことが起きるでしょうか。
『契約の時にそんなこと言ってなかったじゃないか!』
『契約時にちゃんと説明したし、理解いただいたはずだ!』
といった醜い泥沼トラブルに発展しかねません。
社会人の方なら、会議の議事録の重要性は理解していただいていると思いますが、これも同じ理由で、『正確な内容を書面で記録する』ことと『それに同意した』という記録が大切になります。
以上の理由から業務委託の軽薄は一般的に口約束ではなく、業務委託契約書が用いられています。
業務委託契約書の例
業務委託契約書が利用されるケースはビジネスにおいて多く存在しています。一般的に業務委託契約書に該当するものの例を見ていきましょう。
Webサイトの制作業務を委託する契約書
OEM等の製品の製造を委託する契約書
システムの保守などを委託する契約書
自社製品の営業・広告・宣伝業務を委託する契約書
これらのケースはあくまで一例です。他にも様々な種類が存在します。
テンプレートを紹介
ネットで『業務委託契約書 テンプレート』と検索すると、非常にたくさんのテンプレートが出てきます。
『テンプレートいっぱい出てくるけどどれ使えばいいの?』
回答としてはどれを使っても基本的にOKです。なぜなら、どれも項目は似通ったもので内容がほぼ一緒だからです。業務委託契約書に記載する項目は大体決まっています。なので、基本的にどのテンプレートを選択しても問題ありません。レイアウトの好みや直感で好きなものを選んでください。
今回はすぐにダウンロードして使えるオススメテンプレートを5つ紹介します。
では実際に業務委託契約書のテンプレートを見てみましょう。
①ビズ研
出典:ビズ研 (すぐに使える業務委託契約書テンプレート(Word・Excel・Googleドキュメント)無料・登録不要 | ビズ研 (biztemplatelab.com))
シンプルかつ無駄のない作りになっています。項目に関しても過不足なく必要十分です。
おすすめポイント
上記の基本版に加えて、『シンプル版』があり、合ったものを選ぶことができる
ダウンロード形式がword,googleドキュメントから選ぶことができる
また、記事内で収入印紙の貼り方や割り印の押し方など、細かいところまで解説されているので、初めての契約書作成でも安心して取り組むことができます。
②テンプレートNAVI
出典:テンプレートNAVI(業務委託契約書テンプレート01(ワード・Word)|無料ダウンロード|テンプレートNAVI (templates-navi.com))
おすすめポイント
1枚できれいに収まる
その他テンプレートが豊富
このテンプレートはきれいに1枚に収まります。内容も特に不足なくコンパクトにまとめられています。
テンプレートNAVIというだけあって、いろんな種類の書類のテンプレートがあります。気になる方はぜひお試しください。
③テンプレートBANK
出典:テンプレートBANK(「業務委託契約書」の無料テンプレート(書式)一覧(ワード)|ビジネスフォーマット(雛形)のテンプレートBANK (templatebank.com))
おすすめポイント
タイプ別、委任業務別にテンプレートが用意されている
契約に合ったものを選択することができる
このテンプレートは「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3タイプそれぞれにテンプレートがあり、自由に選択することができるのが大きな特徴です。
④Money forward
出典:Money forward(業務委託契約書とは?書き方とテンプレートを紹介 | 電子契約サービス「マネーフォワード クラウド契約」 (moneyforward.com))
おすすめポイント
請求書、電子契約のプロなので品質〇
記事に項目ごとの詳細が記載されておりわかりやすい
⑤Wonder Legal
出典:Wonder Legal(業務委託契約書(フリーランス) - テンプレート、記入するサンプルフォームWordとPDF (wonder.legal))
おすすめポイント
簡単な質問に答えていくだけであなた独自のフォーマットが手に入る
契約書の作成が初めてで全くわからない方におすすめ
このテンプレートはフォームに入力していくだけで、あなた仕様のフォーマットが自動で完成し、ダウンロードできます。
他書類のテンプレートも見てみよう:【無料】フリーランス向け請求書テンプレート5選|作成方法も解説
業務委託契約書の一般的な記載項目
先ほどのテンプレートの内容に従って、上から順番に項目を見ていきましょう。
1.業務委託契約の目的
まず冒頭に、契約の目的を明記します。委託者が受託者に業務の遂行を委託するための契約であることを簡潔に明記します。
普段何かしらの契約書を作成している方や見慣れている方なら違和感ないと思うのですが、委託者を甲、受託者を乙と定め、これ以降は甲、乙を用います。これはどの契約書でも適用される一般常識になります。
2.委託業務の内容
業務委託契約書によって委託する業務内容をできるだけ明確に記載します。ここに記載した業務内容の遂行の対価として受託者への報酬が発生します。
ここでポイントですが、この内容はできるだけ詳細に記載ください。業務の範囲に関しては、きちんと双方が理解していないと、後になってもめる原因となります。
3.契約期間
業務委託契約の期間を定めるとともに契約期間満了時に自動更新されるかどうかやその条件等を詳細に記載します。
4.契約解除
委任者・受託者に契約違反があった場合等の契約の解除について明記します。
ちなみに契約解除の規則に関しては委託形態によって異なります。
委任形態 |
契約解除に関して |
請負型 |
委任者は、仕事を完成しない間であれば自由に契約の解除ができます(民法第641条) また、成果物に欠陥があり、契約の目的を達成できな場合も原則契約解除が可能です(第635条) |
委任型 |
委託者・受託者双方がいつでも契約を解除できます(民法第651条) |
5.報酬と支払い方法
委託業務に対する報酬額を記載します。テンプレートの内容のように、成果物1つにつき何円というように算出方法をできるだけ詳細に明記しておきましょう。また、支払い時期や支払い方法などの条件も詳細に明記しましょう。
6.契約条件の変更
契約締結後に契約内容を変更する必要が生じた際などに適用される条件や手続きについて規定しておくことも重要な項目の一つです。
一般的に契約した内容を変更するときは以下の原則に基づきます。
委託者、受託者全員の合意が必要である
口頭や書面でも成立する
契約変更の効力は過去にさかのぼらない
これらの原則に従わないで契約を変更する必要があるとき、契約の変更に関する規定は必要です。
7.損害賠償
委託者・受託者に契約違反があった場合の損害賠償については明記しておく方がよいでしょう。
実際には、一方に契約違反が生じて損害が出た場合は、契約書に記載していなかったとしても民法に照らし合わせて損害賠償請求が可能です。しかし、実損害よりも低い額の賠償しか認められないケースが多いです。
そのため、損害の範囲を定めたり、予定額を明記することは重要です。
8.再委任
受託者側が勝手に第三者に業務を委託することは基本的にNGです。特に業務形態によって再委任の可否は多少違いがあるようです。(単なる委託者の傾向)
委任形態 |
再委任に関して |
請負型 |
受託者の技能や実績を重視する場合は、再委任禁止の旨を明記して置く必要があります。 |
委任型 |
再委任を認める場合もきちんと明記しておきましょう。 |
9.秘密保持
業務委託の過程で、委託者が受託者に対して、秘密事項を開示することがどうしても必要になるケースが多いです。そのため、開示した情報等の秘密保持に関する記載は必要になります。
ただし、この項目を業務委託契約書とは別に『秘密保持契約書』を作成するケースもあります。それほどまでに重要な項目になるので、委託者の方は、十分検討し、内容を織り込む必要があります。
業務委託契約書作成の際のポイント
業務の効率化や事業の拡販を目的としてアウトソースの活用は現在も活発に行われており、今後もますます増えていくことが予想されます。
それに伴い、業務委託契約書の作成業務が増えていくでしょう。
『とりあえずテンプレートに沿ってなんとなく作成してしまっている』
『契約書の内容と取引の実態にずれがあるような気がする』
そこで、業務委託契約書の作成のポイントを紹介します。
①権利の帰属を明記
成果物を納品する取引において、この権利が受託者、委託者のどちらに帰属するかきちんと明記した方がよいです。過去に成果物の権利をめぐってトラブルがあったケースがあります
また、業務委託契約では知的財産・知的財産権が発生するケースがあります。
知的財産権が発生する具体例
ロゴ、ブランドマークの作成
音楽、SEの作成
各種デザインの作成(キャラクター、グラフィック等
このような知的財産権が発生する業務委託契約において、重要な考え方が『知的財産権は、知的財産を創造した者(受託者)に原始的に発生・帰属する』というものです。
業務委託契約書の作成時に知的財産権に関する事項の記載は注意が必要です。
いくつかテンプレートを見ていると、知的財産権に関する項目が見つかります。さらには委託者に帰属すると書かれている者も多く見つかります。
これはありがちな規定ですが、前述した通り、原則に反するため『無効』となるケースがあります。
知的財産権に関してはかなり奥が深い項目なので、弁護士等の専門家に聞きましょう。
②業務内容と対価
業務委託契約書は言葉の通り、『仕事を他者に依頼する契約』です。仕事の依頼の契約において、最も重要な項目は何だと思いますか?
『仕事の具体的な内容』と『仕事の対価』に関する取り決めです。
仕事の具体的な内容の定義
委託する業務は大別すると2種類存在します。
取引の種類によって追加の書類で業務内容を明記した方が良いケースもあります。
特徴 |
例 |
業務内容の明記先 |
|
---|---|---|---|
スポット取引 |
何をいつまでにが明確に決まっている |
記事の執筆依頼 |
業務委託契約書 |
継続的な取引 |
仕事の内容が随時変更・調整される |
コンサルティング依頼 |
業務委託契約書の他、発注書など(個別契約書) |
仕事の完了(対価発生)の定義
『納品したのに代金支払いを拒否されている』
このトラブルの原因は、仕事に要求される水準や条件、仕事完了の確認プロセスが曖昧になっている(業務委託契約書内に明記されていない)ことです。
どんな方法、手続きによって仕事完了を確認するかは対価の支払い条件にも密接に関係するため非常に重要なポイントです。
業務委託契約書に明記すべき事項は以下の通りです。
成果物の納品を目的としない取引等は『業務完了報告書』の提出をもって仕事完了を確認する旨の条項
成果物が満たすべき水準(委任者の要望や予算)を可能な限り具体的にかつ明確に明記。箇条書きでもよい
業務委託契約書を締結する際の注意点
立場に応じた作成・修正依頼(受託者側)
業務委任契約書の作成、チェック時に注意すべきこととして、受託者、委任者のどちらの立場で書かれたものかを確認することです。
業務委託契約書は立場によって有利になる書き方が異なります。
提案された契約書が自分に不利なこともあります。その際は修正を申込みましょう。
相手任せにして言われるがまま締結すると、後で後悔する場合がありますので、締結前に慎重に検討しましょう。
雇用とみなされる場合がある(委託者側)
業務締結書を交わしていても雇用と判断される可能性があります。雇用とみなされないためにどんなことに注意が必要なのか見ていきましょう。
雇用契約の判断基準
以下、いずれか一つでも守られていない場合は雇用とみなされる場合があります
仕事の拒否権が受託者側にある |
仕事の依頼や業務の指示について、受託者が拒否できないのはNG |
委託者から業務遂行上の指揮命令がない |
業務の内容や遂行方法を委託者が決めることはNG |
時間や場所の拘束性がない |
勤務時間や作業場所の指定はNG |
成果ベースの報酬 |
報酬を作業時間で決めるとNG |
雇用と判断されるとどうなる?
業務委託だったはずが雇用と判断されると、委託者は労働基準法をはじめとした労働法の適用対象となります。以下のデメリットがあります。
法定労働時間を超えた労働に対して残業代(割増賃金)が発生する
正当な理由のない解約が、違法な不当解雇となり、無効となる
業務上の傷病が労災認定される
まとめ
今回の記事では、業務委託契約書に焦点をあて、概要からテンプレートの紹介、各項目の詳細説明、契約締結の際の注意点まで解説しました。
フリーランスとして、業務委託を受ける予定の方や、現在社内でやっている業務のアウトソース化を検討している企業の方にとって少しでも役に立つ記事になっていたら幸いです。
業務委託は自由な契約が結びやすい反面、契約内容をめぐったトラブルも少なくありません。今回紹介した内容を踏まえ、業務委託契約書を作成、締結することで、契約後のトラブルを避けることができるでしょう。
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