年末調整の電子化メリットと義務化への対応方法を解説!導入のポイントとは
毎年の年末調整、膨大な紙の処理に追われていませんか?「手続きの電子化」が進み、ペーパーレス化が叫ばれていますが、「完全に紙がなくなるわけではない」という現実に悩む担当者も少なくありません。
本記事では、年末調整の電子化のメリットやデメリット、従業員への周知方法、令和9年の義務化拡大に向けた対策を徹底解説します。
書類の回収・催促・保管に追われる年末調整業務。完全な電子化が難しい企業でも、紙の郵便物をそのまま電子化する方法があります。
年末調整の電子化とは?仕組みと背景
年末調整の電子化とは、これまで紙で行っていた年末調整に関する一連の手続きの電子化を指します。具体的には、従業員からの年末調整申告書の回収や、生命保険料控除証明書などの必要書類の添付を、デジタルデータやクラウドシステムを介して行う仕組みです。
この動きの背景には、政府が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)があり、業務効率化とペーパーレス化の実現が目的とされています。
これにより、企業は膨大な紙の処理から解放され、より重要な業務に注力できるようになるでしょう。また、電子化によって申告内容の確認や調整手続きの工数を大幅に削減することが可能です。
年末調整電子化のメリット
年末調整電子化のメリットは、企業(担当者)だけでなく、申告を行う従業員にとっても非常に大きなものです。双方の視点から解説します。
【従業員側】年末調整申告書の手書き不要に
従業員にとって、毎年年末に控える手書きでの申告書作成は、大きな負担です。電子化されたシステムを利用すれば、PCやスマートフォンから案内に沿って入力するだけで済み、年末調整申告書の作成にかかる手間が根本的に解消されます。
システムが入力内容をチェックするため、記入漏れや計算間違いの不安からも解放されるでしょう。従業員側の申告業務がスムーズになることは、社内全体の士気向上にもつながる重要な要素です。
【従業員側】控除証明書の電子取得が可能に
生命保険料や地震保険料などの控除証明書を保険会社等から電子データ(XML形式)で取得し、システムに連携することが可能です。これにより、紙のハガキを待つ・保管する手間がなくなり、申告に必要な書類を効率的かつ確実に収集できます。
この仕組みにより、従業員側の手続き負担が軽減されることは明らかです。控除証明書を紛失してしまうリスクも大幅に減少するため、スムーズな調整手続を実現できるでしょう。
【従業員側】控除証明書の紛失リスクが軽減される
電子データで控除証明書を管理すれば、書類をなくしたり、提出期限ギリギリになって「見当たらない」と慌てたりする心配は無用となります。重要な書類を安全にデジタルで保管できるため、従業員は安心して申告準備を進められるでしょう。
万が一手元のデータを削除してしまっても、保険会社のサイトやマイナポータルから再度取得すれば済む話です。再発行の依頼や捜索にかかる無駄な時間もゼロになります。結果として、総務担当者への「書類が見当たらないのですが」といった問い合わせも減り、間接的な対応工数も削減されます。
互いに余計な気を使わず、ストレスなく調整手続を進められる点は、実務上の見逃せない大きな利点です。
【企業側】配布・回収コストの削減
年末調整の時期、大量の年末調整申告書や案内文を印刷し、一人ひとりの封筒に分けて配る作業は、多忙な総務部門にとって重い足枷となります。電子化に踏み切れば、これら一連のアナログ作業にかかっていた膨大な労力と郵送費などの経費を丸ごと削減可能です。
工数が浮いた分、担当者は制度改正への対応や従業員ケアといった、本来注力すべき主要業務へ貴重な時間を割けます。また、システム上で提出状況が一目でわかるため、未提出者への催促もメール一本で完結します。
書類回収の遅れにやきもきしたり、回収後の山積みになった書類を整理したりする苦労もなくなり、業務効率は格段に向上するはずです。
【企業側】チェック・検算業務の自動化
従業員が入力したデータはシステムが自動で計算・照合するため、担当者が数字の整合性を確認する重圧から解放されます。手書き文字の判読に時間を取られることもありません。
この手続きの電子化により、計算間違いや記入漏れといった人為的なミスは劇的に減少します。システムが入力段階でエラーを弾いてくれるため、差し戻しの手間も最小限で済みます。
申告内容の正確性が担保されるため、安心して確定作業を進められるでしょう。従業員数が多い企業ほど、膨大な確認作業の短縮による恩恵を肌で感じられ、精神的な負担も軽くなります。
【企業側】ペーパーレスによる保管コスト削減
法律で7年間の保存が義務付けられている年末調整申告書などを電子データで管理できるようになります。これまで年々増え続け、オフィスのキャビネットや外部倉庫を圧迫していた紙の保管場所の確保は不要です。
物理的なファイル整理や、保存期間が過ぎた書類の廃棄作業といった手間もなくなります。オフィスの空間を有効に使えるだけでなく、税務調査などで過去のデータが必要になった際も、検索一つで即座に取り出せます。紛失や盗難のリスクも減り、情報セキュリティも強化されるでしょう。
管理業務全体の効率化に貢献する電子化は、企業の法令順守と環境配慮を両立させる、現代に即した賢い選択です。
年末調整の電子化にデメリットはある?導入の注意点
年末調整の電子化には大きなメリットがある一方で、従来のやり方をガラリと変えることには、いくつかのハードルが存在します。
導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、事前に押さえておくべき課題と対策を解説します。
導入コストと初期設定の手間
クラウド型の年末調整電子化システムを導入する際、初期費用や月額利用料といった金銭的なコスト発生は避けられません。それ以上に現場の負担となるのが、既存の給与システムとの連携設定や、従業員情報の初期登録にかかる工数です。
特に初年度は、従来の紙業務と並行して準備を進める必要があり、担当者の業務量は一時的に増加するでしょう。単にソフトを買えば終わり、ではありません。自社の運用フローを一から見直す覚悟が必要です。費用対効果だけでなく、初期の運用体制構築にどれだけの人的リソースを投入できるか。
見積もりの甘さは、年末の繁忙期に混乱を招く原因となります。慎重な計画こそが成功への鍵です。
従業員へのIT教育が必要
システム操作に不慣れな従業員に対し、使い方の説明やマニュアル整備、操作説明会といったITリテラシー向上に向けた教育が不可欠です。
新しいツールへの移行は、現場に少なからずストレスを与えます。「画面のどこを押せばいいかわからない」といった初歩的な問い合わせが殺到すれば、手続きの電子化による効率化どころではありません。丁寧なFAQの作成や、相談窓口の設置など、手厚いフォロー体制を構築しなければなりません。
従業員が迷わず操作できて初めて、システムは真価を発揮します。従業員への周知徹底と教育にかかる手間は、システム導入とセットで考えるべき必須の投資といえます。
年末調整電子化が難しいと感じる層へのサポートが必要
全ての従業員が、新しいデジタルツールをスムーズに使いこなせるわけではありません。高齢の従業員や、私用スマートフォンを持っていない方、長期休業中で社内ネットワークにアクセスできない方など、年末調整電子化が難しいと感じる層は必ず存在します。
彼らを置き去りにせず、紙での提出を認めるなど、柔軟かつ例外的な対応フローを継続する必要があります。デジタル一本化を急ぐあまり、現場に過度な負担を強いては本末転倒。
「誰が、どのようなケースで紙対応を行うか」というルールを事前に定めておくことが、無用なトラブルを防ぎ、円滑な調整手続を維持するポイントとなるでしょう。
電子化に対応していない書類(原本)がある
生命保険料控除証明書などはデータ化が進んでいますが、全てがデジタルで完結するわけではありません。例えば、国外居住親族に関する親族関係書類や送金関係書類など、法令上、原本の提出や提示が求められる書類は残ります。
発行元の対応状況により、紙しか手元にないケースもあるでしょう。「電子化=完全ペーパーレス」という認識でいると、こうした電子化に対応していない書類の扱いに現場が混乱します。
アナログな原本を「誰が回収し、どうファイリングして保管するか」。残存する紙業務の運用ルールこそ、厳格に整備しておく必要があります。
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電子化の義務化はいつから?令和9年の改正ポイント
企業のDX推進は、税制の動向と密接に連動しています。現在、基準年(一昨年)の法定調書の提出枚数が100枚以上であった大企業は、既に電子申告が義務化されています。しかし、この対象が大きく拡大する予定です。
令和9年(2027年)からは、電子申告の義務化対象が「法定調書を30枚以上提出した企業」にまで拡大される見込みです。この改正は、多くの中小企業にも適用され、年末調整手続きの電子化への対応が待ったなしの状況です。
義務化対象となる前に、余裕をもってシステム選定と運用体制の構築を始めるのが賢明でしょう。
年末調整手続きの電子化を進める手順とやり方
年末調整手続きの電子化は、適切な手順を踏めば、現場の混乱なく導入できます。ここでは、スムーズな移行を実現するための具体的なやり方とステップを追って解説します。
実施方法の検討
最初に、年末調整をどのように電子化するか、その根本的なやり方を決定します。国税庁が無料で提供しているソフト(年調ソフト)を利用するのか、または、既存の給与システムと連携できる民間企業のクラウドサービスを導入するのか。
完全に電子化するのか、部分的に電子化するのか。御社の規模や既存のIT環境、予算に合わせて慎重に選びましょう。この実施方法の選択が、今後の手続きの電子化の効率を大きく左右します。特に、給与計算システムとのデータ連携がスムーズに行えるかは、担当者の手作業を減らす上で最も重要な確認事項となります。
制度変更に伴う社内体制・技術的措置の整備
手続きの電子化は、令和3年4月以降、税務署への承認申請が不要となり、導入が容易になりました。しかし、従業員から年末調整申告書などのデータを電子的に受け取るには、「二つの技術的な措置」が必須です。
一つは、データを送る方法(社内メールやLAN、USBなど)を定め、セキュリティ対策を講じること。二つ目は、提出者が本人であることを確認する措置(ID・パスワード認証や電子署名など)を整えることです。
これらの具体的な措置を社内規定として整備することが、法的要件を満たす鍵となります。
従業員への周知とソフトの導入
従業員への十分な周知は、移行の成否を分ける極めて重要なポイントです。電子化のスケジュール、利用するソフトやサービスの操作方法について、マニュアルや説明会を通じて丁寧に情報を提供すべきといえるでしょう。
従業員が迷わず使えるよう、ソフトやツールを導入し、環境を整えるのも大切です。特に従業員側のメリットを強調し、協力を得るためのコミュニケーションを丁寧に行うことが大変重要になります。
年末調整申告書データの作成・回収・電子申告
周知が完了したら、従業員はシステム上で年末調整申告書を作成し、データがシステム経由で企業側へ回収されます。
総務部門では、回収したデータの内容を確認し、給与システムに取り込む作業を行います。最終的に、e-Taxなどを利用して税務署へ電子申告を行うことで、すべての手続きの電子化が完了します。
この一連の作業の流れを標準化し、マニュアルに落とし込むことが、継続的な業務効率化に繋がる重要な工程です。なお、年末調整の電子化についての流れを理解するには、国税庁のパンフレットも役立ちます。
年末調整電子化の導入ポイント
電子化への一歩は、総務部門の皆様にとって大きな決断です。ここでは、現場の負担を最小限に抑え、滞りなく移行を実現するために、導入時に特に大切にしていただきたい三つの要点を解説します。
自社環境にマッチしたシステムを選定する
手続きの電子化を成功させるには、既存の給与システムなどと、新しいシステムが滞りなくデータ連携できるかどうかが極めて重要です。
連携がうまくいかないと、かえって手入力が増加し、担当者の負担が重くなります。システムの適合性を最優先で確認し、まるで元々一体だったかのように使える、自社環境に最適なシステムを選び抜いてください。
試用期間を利用し、実際に業務の流れに組み込めるかどうかの綿密な検証が、安心への近道です。
トラブルを防ぐために従業員への周知・教育を徹底する
システム導入後の滞りない運用の鍵は、何よりも従業員の協力にあります。新しいシステムへの移行期に混乱を防ぐには、従業員への十分な周知と教育が強力な備えとなります。操作マニュアルだけでなく、電子化のメリットや、申告書の提出方法の変更点を丁寧に説明すべきです。
従業員側の「よくわからない」という不安を取り除き、理解と協力を得るためのサポート体制の整備は、必須の導入工程といえるでしょう。
電子化に対応できない原本書類のルールを整備する
すべての書類がデジタル化できれば理想ですが、残念ながら電子化に対応できない一部の書類や、法令上原本の回収が必要なケースは残ります。これらのアナログな調整手続について、「誰が、いつまでに、どう回収・確認し、保管するのか」という流れを明確に定めておく必要があります。
排除できない紙の業務があるからこそ、担当者の判断に任せず、混乱を防ぐための統一ルールを徹底することがポイントとなるのです。
電子化しても「原本不要」にならない?
「年末調整を電子化すれば、紙は一切不要になる」という期待は、残念ながら現状では現実的ではありません。控除証明書などのデータ化は進んでいますが、税務署や自治体からの通知、契約書、一部の例外的な書類などは、依然として紙で会社に届きます。
さらに、多くの企業では、退職者への源泉徴収票の交付という発送業務も残ります。年末調整の電子化によって計算業務が効率化されても、これらの郵便物の受け取りや管理というアナログな業務が残存するため、「郵便物確認のためだけに出社せざるを得ない」という、テレワークの阻害要因が生じてしまうのです。
この残存する「紙」の業務に、総務担当者は多くの工数を割くことになります。
クラウド郵便サービス「MailMate」で総務の工数を削減
年末調整の電子化によって申告書の処理は効率化しますが、税務署からの通知書や契約書といった紙の郵便物管理というアナログなボトルネックは残ります。
この「紙」の対応こそ、担当者が出社せざるを得ない大きな原因です。クラウド郵便サービス「MailMate」は、この課題を根本から解決します。MailMateでは、会社に届くすべての郵便物を代理で受け取り、即座にスキャンしてPDF化するというサービスを提供しています。
書類がデジタル化されるため、担当者は、自宅や出張先からリアルタイムに内容を確認できるというのがメリットです。これにより、郵便物確認のための出社は不要となります。こういった機能を活用し、仕分けや物理的な配布といった、時間のかかるメール室業務をアウトソースできれば、総務の工数を劇的に削減可能です。年末調整のコア業務に集中できる環境を整える、デジタル時代の必須ツールといえるでしょう。
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「年末調整電子化のメリット」に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、年末調整の手続きの電子化を進める上で担当者が把握しておくべき、具体的なメリットやルールに関する質問と回答を解説します。
年末調整で控除証明書を電子化したら原本は必要ですか?
原則として、保険会社などから発行された電子的控除証明書(XMLデータ)を利用して電子申告を行う場合、原本の提出は不要です。電子データが税法上の要件を満たしているため、紙の証明書を保管する必要はありません。
ただし、電子化に対応していない証明書データや、システムを通さず画面を印刷した紙を提出する場合などは、従来通り原本が必要となるケースがあります。提出方法については、事前に社内ルールを確認してください。
年末調整の電子化を従業員に拒否されたらどうすればいい?
年末調整の電子化は、法令上は従業員に同意を得る必要はないものの、無理強いしにくい面はあるでしょう。
このような従業員がいる場合、企業側は紙と電子データ、両方の申告書を円滑に管理・処理できる体制を整える必要があります。全従業員が一律に電子化へ移行できなくても、部分的な導入から進めていくというのも一つの方法です。
年末調整電子化メリットまとめ
年末調整の電子化は、今後義務化が拡大する流れの中で、企業が生産性を高め、従業員満足度を高めるための必須の手段となります。手続きの電子化は、企業・従業員双方に大きな工数削減メリットをもたらします。令和9年の義務化拡大を見据え、早期の導入検討が急務です。
計算業務の効率化に加え、紙の申告書や証明書の管理負担が大幅に軽減されるでしょう。この機会を活用し、御社のバックオフィス業務のDXを成功に導いてください。
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