【一人親方向け】請求書の書き方は?人工代やインボイスの扱いも解説

最終更新: October 29th, 2024
【一人親方向け】請求書の書き方は?人工代やインボイスの扱いも解説

「一人親方の請求書の書き方を知りたい」

「請求書を作成しているが、人工代の書き方が分からない」

「一人親方でも適格請求書を発行する必要はあるのか」

こうした疑問をお持ちの方には、この記事が参考になるでしょう。

建設業には、労働者を雇用せず、自分だけで事業を営む「一人親方」という働き方があります。そして一人親方が報酬を得るためには、自分で請求書を作成しなければなりません。

ただ、建設業には人工代など業界独自の項目もあるため、請求書作成に苦労する方も多いでしょう。

そこで本記事では、一人親方向けに請求書の書き方を解説します。人工代の書き方やインボイス制度への対応なども詳しく説明するので、ぜひご一読ください。

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一人親方の請求書に記載する必須項目は5種類!

一人親方の請求書に記載する必須項目は5種類!

請求書とは、商品やサービスの対価を記載した書類です。請求書には、以下のような役割があります。

  • 提供した商品・サービスの内容を明確にする

  • 正確な金額を記載し、トラブルを防止する

  • 支払期日を記載することで振込の遅れを防ぐ

  • 税務調査時に証明書として提出する

実は法律上、請求書の発行義務は課せられていません。とはいえビジネスの慣習としては一般的ですし、取引先から請求書の作成を求められるケースも多いでしょう。

請求書には、必ず記載すべき項目が5つあります。

1.取引年月日

これは、取引を行った年月日を記載する項目です。これは請求書の発行日とは異なるので、注意が必要です。同じ月に行われた複数回の取引をまとめて請求する場合も、それぞれの取引年月日を記載しましょう。

  • 記載例)20XX年8月1日

  • 記載例)令和X年8月1日

一つの請求書内で、西暦と和暦が混在しないようにしてください。

2.請求書の交付を受ける事業者の氏名等

この項目では、請求書の宛先となる取引先の名称を記載します。

「(株)」などの略称を使わず、「株式会社」と正式名称で書いてください。

なかには取引の担当者と請求書の宛先が異なる場合もあるので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。住所や電話番号などを詳しく記載する必要はありません。

  • 記載例)株式会社〇〇 御中

  • 記載例)株式会社〇〇 △様

敬称を付ける際は、会社名や部署名の後には「御中」、個人名の後には「様」と使い分けます。担当者名がわからない場合は、「ご担当者様」という書き方も可能です。

3.請求書の発行者の情報

ここには請求書の発行者の氏名、屋号などを記載します。住所や電話番号、メールアドレスなどの情報は必須でないものの、慣例として記載するケースも多いです。

取引先によっては押印を求められる場合もありますが、近年では電子印鑑を使った請求書、あるいは押印なしの請求書も増えてきました。取引先によって考え方が異なるので、確認しておきましょう。いずれも同じように法的効力を持ちますよ。

4.取引内容

取引内容は、請求書のなかでも非常に重要な項目です。

以下のように商品名やサービス内容と、それぞれの数量や単価、金額を具体的に書きましょう。

品目

数量

単価

金額

例)壁紙張り替え

1

50,000

50,000

例)サンプルA

3

5,000

15,000

品目

この項目は金額の確認だけでなく、取引先に作業工程を確認してもらう意味合いもあります。そのため作業内容や材料などを、具体的かつわかりやすく記載しましょう。

数量

品目によって書き方は異なりますが、作業時間や作業面積、商品の枚数や個数などを記載します。数量の記載が難しい場合は、「一式」などと書くこともあります。

単価

時間単位、あるいは作業単位ごとの単価を記載します。時給制の報酬であれば1時間あたりの金額を、平方メートルごとの支払いであれば1㎡あたりの金額を書きましょう。

金額

基本的には数量×単価で計算します。ここでは消費税を含まない金額の記載が一般的です。

また値引きを行う場合は、下に一行追加して書く、あるいは「値引き」の項目を追加して記載するとわかりやすいです。

品目

数量

単価

金額

例)壁紙張り替え

1

50,000

50,000

例)値引き

1

-10,000

-10,000

基本項目は以上の4つですが、場合によって「単位」などの項目が追加されることもあります。

5.税込の取引金額

「取引内容」の項目に商品ごと・サービスごとの金額を記載してありますが、それらと消費税の合計額が「税込の取引金額」となります。

  • 記載例)合計金額 150,000円

  • 記載例)合計金額 150,000円(8%対象:50,000円 10%対象:100,000円)

一般的な請求書の場合は、上の書き方で構いません。ただし適格請求書の場合は税率ごとに記載する必要があるので、下の書き方にしましょう。

これが実際に支払われる金額となるので、間違いのないよう正確に計算することが大切です。

一人親方の基本的な請求書の書き方

一人親方の基本的な請求書の書き方

基本の請求書を書く際は、まず何についての書類なのかが一目で分かるように、題目を記します。

書類の上部中央か左上に、大きく「請求書」あるいは「御請求書」などと記しましょう。

次に、宛先となる取引先の情報を左上に記載します。そして右上には発行者情報を、中央には取引内容を詳しく書き、最後に税込の取引金額を書いてください。

一人親方-記入例

引用:請求書テンプレートメールメイト

ここからは、その他の項目の書き方を解説していきます。

請求書番号

請求書番号は記載必須の項目ではありませんが、取引先とのやり取りをスムーズにするためにも、番号を付けておくと良いでしょう。見積書と紐づけて管理できる点、売上管理がしやすくなる点も、請求書番号を付けるメリットです。

請求書番号には「顧客番号+日付+取引番号」の組み合わせで付ける、通し番号で付けるなど、いくつかの採番パターンがあります。

  • 記載例)005-20240801-001(顧客番号+日付+取引番号)

  • 記載例)00520240801001(同上)

  • 記載例)00828(通し番号)

請求書番号の付け方に決まりはありませんが、一度ルールを決めたらすべての請求書で統一してください。

請求日

請求日は「発行日」と呼ばれることもあり、請求書を発行した日付を記載する項目です。とはいえ請求書を作成した日そのものを書くわけではありません。

ここには、取引先の締め日を記載するのが一般的です。たとえば締め日が31日であるなら、請求日は「20XX年X月31日」となります。

取引先によって締め日は異なるため、事前に取引先への確認が必須です。

支払期日

この項目では、取引金額をいつまでに支払うか明記します。ここも取引先とのすり合わせが必要な部分であり、たとえば事前に「月末締め、翌月15日払い」と決めていたなら、支払期日は「20XX年X月15日」となります。

また中小企業庁の下請代金支払遅延等防止法によると、基本的に取引日から60日以内、かつなるべく早いタイミングで支払いを行うよう定められています。

支払期日を定める際は、この基準も参考にすると良いでしょう。

参考:下請代金支払遅延等防止法 | 中小企業庁

振込先情報

振込先情報として必要なのは、以下4点です。

  • 銀行名(銀行コード)・支店名(支店コード)

  • 口座種別

  • 口座番号

  • 口座名義 ※カタカナで記載する

銀行コードや支店コードの記載は必須ではありませんが、取引先の手間を軽減するためにも、できれば記載するようにしましょう。

また口座種別の記載漏れは、よく起こるミスの一つです。必ず「普通」「当座」など、種別を明確に記載してください。

請求書を作成する際の注意点

請求書の作成時には、いくつかの注意点があります。

1点目は、金額を記載する際に「円」「¥」のどちらを使うかはっきりすること。

いずれを使っても構いませんが、書類内で統一してください。

2点目は、端数が生じた場合の対応を取引先と確認しておくことです。

  • 四捨五入する

  • 切り捨てる

  • 切り上げる

主な対応は3パターンあるので、どれを採用するか明確にしておきましょう。

そして3点目は、取引内容を詳しく記載することです。

たとえば「リフォーム」という書き方だと、金額のイメージが付きにくいですよね。そのため作業内容を記載する際は、「壁紙の張替え」「クロス貼り」など、具体的に書くことが大切です。

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一人親方の請求書には人工(にんく)代を記載する

一人親方の請求書には人工(にんく)代を記載する

「人工(にんく)代」は、一人親方が請求書を作成する際に必ず使うであろう項目です。

人工代は建築業界で使われる用語の一つであり、1日の仕事に対して発生する人件費を指します。半日分の人件費は「半人工」と呼ばれます。

職種によって人工代の相場は異なりますが、20,000円~30,000円というケースが多いでしょう。近年では人件費が増加していることに伴い、人工代の相場も上昇傾向にあります。

一人親方が請求書に人工代を記載する方法

たとえば1日20,000円の現場で勤務した場合、「1人工=20,000円」と表せます。そして請求書に記載する際は、取引内容の「品目」に「人工代(人数×日数)」と書きます。

その場合の書き方例は、以下のとおりです。

品目

数量

単価

金額

例)人工代(1人×3日)

3

20,000

60,000

例)人工代(2人×5日)

10

20,000

200,000

このように「数量」には「人数×日数」を書きましょう。単位を記載する欄があるなら、「人工」と書けば問題ありません。

また人工代は軽減税率の対象ではないため、消費税額は10%です。人工代が20,000円なら消費税額は2,000円、合計金額は22,000円となりますよ。

一人親方にも適格請求書は必要なのか

一人親方にも適格請求書は必要なのか

2023年10月にインボイス制度がスタートし、消費税の仕入税額控除を受けるためには適格請求書が必要となりました。そのため税額控除を受けたい事業者からは、一般の請求書ではなく適格請求書を発行するように求められるはずです。

ただし適格請求書を発行するには、税務署に登録申請を行い、適格請求書発行事業者として登録を受けなければなりません。申請から登録までは1ヶ月~1ヶ月半ほどかかるので、登録する方は早めに申請しましょう。

参考:適格請求書発行事業者の登録通知時期の目安について(国税庁)

インボイス登録したほうが仕事を得やすい

インボイス登録をするかどうかは、個人の判断に任されています。一人親方であっても、必ず登録すべきというわけではありません。

とはいえインボイス登録をしているほうが、仕事を得やすいといえるでしょう。たとえばインボイス未登録のAさんとインボイス登録済のBさんがいた場合、取引先が支払う総額は以下のように変わります。

  • Aさんの場合:取引金額30万円+消費税額3万円=支払総額33万円

  • Bさんの場合:取引金額30万円+消費税額3万円-税額控除3万円=支払総額30万円

この例では3万円の差額が発生しますが、取引金額が大きくなるほど差額も広がります。だから適格請求書を発行できる一人親方のほうが、仕事を得やすくなるのです。

適格請求書の記載項目

適格請求書には、必須の記載項目が追加されます。

  • 請求書発行者の登録番号

  • 税率ごとに分けて合計した対価の金額と適用税率

  • 税率ごとに区分した消費税額等

インボイスの登録が完了すると、Tから始まる13桁の登録番号が通知されます。適格請求書には、必ずこの登録番号を記入してください。また消費税率ごとの合計金額と、それぞれの消費税額も記載します。

ただし消費税が10%のみ、あるいは8%のみという場合は、どちらかの記載のみでも構いません。その場合も適用税率は明記するようにしましょう。

一人親方が請求書を作成する方法

一人親方が請求書を作成する方法

請求書を作成するには、主に3つの方法があります。

  • 市販の請求書に手書きする

  • ExcelやWordを使って自作する

  • テンプレートやツールを利用する

請求書には特定のフォーマットが定められていないため、自分の使いやすい形で作成してください。

インターネットからダウンロードできる無料のテンプレート・ツールも多いので、うまく使うと良いでしょう。私も気に入ったテンプレートを探して活用しています。

ただし場合によっては、取引先が請求書のフォーマットを提示してくることもあります。請求書を作成する前に、取引先と確認しておきましょう。

一人親方が請求書を送る方法

一人親方が請求書を送る方法

取引先に請求書を送る方法は、主に4つあります。

  • 郵送する

  • FAXで送付する

  • メールに添付する

  • 請求書発行システムを利用する

最も一般的な方法は郵送です。請求書を作成したら、白か薄青の封筒、あるいは茶色のクラフト封筒に入れて送ります。またFAXは急ぎの際に便利ですが、後日改めて原本を郵送するなどの対応が必要となるでしょう。

一方、メール添付や請求書発行システムを利用する場合は、電子請求書を発行することになります。なかには取引先が電子請求書に対応できないケースもあるので、先に同意を得ておくことが重要です。

どの方法にもメリット・デメリットがあります。取引先とも相談しながら、適切な方法を選んでください。

請求書には送付状を添えるのがマナー

請求書を送る際は、送付状を添えるのがビジネスマナーです。郵送の場合は1枚目に送付状、2枚目以降に請求書を重ねて封入します。FAXの場合も同様に、送付状の次に請求書を送信してください。

送付状には以下の内容を記載しましょう。

  • 送付日

  • 送付先(宛先)

  • 送付者の情報

  • 件名(例:20XX年X月 請求書送付のご案内)

  • 本文

  • 送付書類の概要

  • (FAXの場合)送信枚数

メールの場合は送付状を付けなくても構いませんが、わかりやすく件名を付けたうえで、本文に挨拶や添付書類の概要などを記載すると良いですね。

請求書発行システムを利用する場合も、送付状を付ける必要はありません。備考欄などに一言添えると、丁寧な印象を与えられるでしょう。

電子帳簿保存法への対応に注意

2024年1月に改正電子帳簿保存法が施行され、電子データとして受領した書類は電子保管が基本となりました。また紙に印刷した請求書も、スキャナで取り込んでのデータ保存ができるようになりました。

一方、電子帳簿保存法の保存要件として以下の2点が定められています。

  • 真実性の確保:電子データが改ざんされていないことを証明する

  • 可視性の確保:電子データの検索や表示を可能にする

そのためにタイムスタンプを付与する、削除や修正の履歴を残す、ファイル名を工夫して検索性を高めるなど、さまざまな対応が求められます。

請求書を作成する際は、電子帳簿保存法の要件も確認しておきましょう。

一人親方が請求書を保管する期間

一人親方が請求書を保管する期間

請求書を送付する際にコピーが手元に残っていれば、請求書の保管義務が発生します。

電子請求書の場合もデータが手元に残るため、電子帳簿保存法に則って保管しなければなりません。

保管期間は、個人事業主は5年間、法人の場合は7年間。いずれも起算日は確定申告の期限日翌日です。請求書の発行日とは異なるので、注意してください。

また帳簿類については、7年間の保存義務があります。請求書と帳簿類をあわせて保管している方は、どちらも7年間保管すると安心ですね。

一人親方は正しい請求書の書き方を知っておこう

一人親方は正しい請求書の書き方を知っておこう

本記事では一人親方の請求書作成にあたって、項目ごとの書き方や注意点などを詳しく解説しました。

請求書は取引の重要な証拠であり、支払金額の根拠となる書類です。取引内容を明確に記す、金額を正確に書くなど、丁寧に作成することが大切です。

ただ、請求書には記載項目が多いため、自分で一から作るのは大変かもしれません。そんな時はテンプレートやツールを利用し、効率よく請求書を作成しましょう。インボイス対応のテンプレートを使えば、適格請求書の発行も簡単です。

ぜひ正しい請求書の書き方を知り、スムーズに取引を進めてください。

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