海外赴任で住民票は実家に移せる?抜かないとどうなる?判断ポイントを解説

海外赴任が決まったとき、意外と悩むのが「住民票ってどうすればいいの?」という問題です。特に、「実家に住民票を移せるの?」「そもそも抜いたほうがいいの?」といった疑問は、制度が複雑なぶん、混乱しがちですよね。
この記事では、「海外赴任・海外移住と住民票」にまつわる疑問を解説。実家に住民票を置いておくのはアリなのか、抜いたらどんな影響があるのかなど、ややこしいポイントを整理しています。
海外赴任や長期の海外生活を控えている方、あるいは今まさに海外にいる方にも役立つ内容なので、ぜひ最後まで読んでご自身に合った判断の参考にしてください。
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海外赴任、住民票を実家に移すのはアリ?

海外赴任が決まると、「とりあえず実家に住民票を移しておけば安心かな?」と考える方も多いかもしれません。実際、実家に住民票を移すこと自体は法律的に可能です。ただし、条件があります。
住民票を移すには、「そこに住んでいる実態」が求められます。つまり、郵便物が届いたり、寝泊まりする環境があったりするなど、「生活の拠点として認められる」必要があるのです。海外赴任で実家に一時的に戻るわけではなく、単に住所登録だけをする場合には、形式上はOKでも“実態が伴わない”と判断されるリスクもあります。
万が一トラブルが起きた場合、「虚偽の住民登録」と見なされる可能性もゼロではありません。
一時的な措置として実家に住民票を置くのはよくある選択ですが、「実態との整合性」を意識することが大切です。
住民票を残す?抜く?選び方のポイント

この項目では、海外赴任にあたって住民票を「残す」「抜く」どちらがいいのか迷ったときの判断基準を紹介します。
税金や手続きへの影響を踏まえて、損をしない選び方を見ていきましょう。
海外赴任で住民票を残すと住民税はどうなる?
海外赴任中に住民票を日本に残したままにしておくと、「居住者」として扱われ、住民税の納税義務が発生します。たとえ日本に実際に住んでいなくても、住民票がある限りは「その自治体の住民」とみなされるためです。
住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、赴任初年度はもちろん、翌年も納税通知書が実家などに届くことになります。支払いを滞納すると延滞金や催告が発生することもあり、出国前に納税管理人の設定や、納付方法の確認をしておくことが重要です。
また、赴任先で収入が発生している場合、日本との二重課税の問題も絡んできます。現地で税金を納めていても、日本に住民票があると、日本の課税対象となる可能性があるため、専門家への相談も視野に入れましょう。
海外赴任中の住民税の扱い|非居住者との違い
海外赴任中に住民票を抜いて「非居住者」となると、原則として住民税の課税対象外となります。これは、住民税が「その自治体に住んでいる人」を前提に課される税金だからです。
非居住者扱いになることで、赴任中は住民税の納税義務がなくなり、経済的な負担が軽くなるメリットがあります。ただし、これには条件があり、1年以上の海外滞在が見込まれていることが前提です。
一方で、住民票を残して「居住者」のままにしておくと、たとえ海外にいても住民税が発生します。短期赴任で住民票を残す判断をする場合は、住民税の支払い計画もきちんと立てておく必要があります。特に、国内に収入源がない場合は「支払いだけ発生する」ということもあるため、損をしないように検討しましょう。
住民票を移さなくても良いケースは?
基本的には、1年以上の海外赴任が決まった場合は住民票を抜く必要があります。一方、赴任期間が1年未満であることが明確な場合は、国外転出届の提出は必要ありません。
つまり、一時的な海外研修やプロジェクトベースの出張など、数か月で帰国予定があるようなケースでは、住民票をそのままにしておいても問題になることはほとんどないということです。とはいえ、状況が複雑な場合などは、念のため自治体へ確認をしておくのが安心です。
海外在住で住民票をそのままにするメリットとデメリット

本項目では、海外赴任中に住民票を「そのまま残す」場合のメリットとデメリットを詳しく紹介します。
制度の恩恵を受けられる反面、注意点もあるため、総合的に判断する材料にしてください。
メリット
住民票をそのまま残しておくことで、日本の居住者として扱われ続けるため、いくつかの行政サービスを継続して利用できます。
また、家族が日本に住み続ける場合、世帯構成を維持できるため、健康保険の扶養関係なども維持しやすくなります。短期帰国時に行政手続きを行う際も、「住民がいる自治体」で対応してもらえるため、手間が少なくなるのも利点の一つです。
このように、制度的・実務的な恩恵を受けたい場合には、住民票を残す判断が有効なケースもあります。
デメリット
一方で、住民票を残すことで生じるデメリットも見逃せません。最大の懸念点は、日本に住んでいなくても「住民税の納税義務」が発生することです。これは住民票がある限り、居住者とみなされるからです。
また、非居住者向けの税制優遇に制限がかかることもあります。さらに、保険や年金の支払いが継続して必要となるため、「実際に住んでいないのに費用だけかかる」という状況にもなりがちです。
手続きのしやすさや制度の継続利用を優先するか、経済的な負担を抑えるか。それぞれの事情に応じて、慎重に選ぶ必要があります。
住民票の除票とその手続きについて

本項目では、「住民票を除票する」とはどういうことか、また実際に除票手続きを行う際の流れと注意点について解説します。
住民票を除票するデメリットはある?
「除票(じょひょう)」とは、住民票の登録が削除されることを指します。海外赴任などで転出届を出すと、住民基本台帳からその人の情報が削除され、「除票」という扱いになります。
除票されることで、その自治体の住民ではなくなるため、住民税の支払い義務や国民健康保険の加入義務も原則なくなります。一方で「日本国内に住民票があること」を条件とした制度は利用できなくなります。
また、帰国時には住民票の再登録が必要になるため、手続きの手間も発生します。制度の違いや必要書類の確認をしっかり行ってから住民票の手続きをしておきましょう。
海外赴任の際の除票手続き(海外転出届)はどうやる?
海外赴任が決まったら、出国前に市区町村役場で「転出届」を提出することで、住民票の除票が行われます。提出は基本的に本人が行いますが、委任状を用意すれば代理人でも可能です。
転出届は、海外に1年以上滞在する予定がある場合に必要な手続きで、基本的に「渡航の14日前から」提出できます。提出先は、現在住民票がある市区町村役場で、窓口での対応が原則ですが、一部自治体では郵送やオンライン申請も可能です。横浜市などでは、マイナンバーカード継続利用手続きを窓口で実施することから、窓口にて海外転出手続きを行うよう案内されています。
提出時には、本人確認書類のほか、代理人による手続きを希望する場合は委任状が必要です。また、転出届と一緒に「納税管理人」の届出も行っておくと、赴任中の税金関係のトラブルを防げます。
転出届には、出国予定日・新しい住所・渡航先の国名などを記載します。
手続き自体はシンプルですが、家族の医療保険や年金の手続きとも絡んでくるため、余裕を持って準備しておくことが大切です。
海外赴任時の住民票による免許証やマイナンバーへの影響

本項目では、海外赴任で住民票を抜いた場合に、運転免許証やマイナンバー制度にどのような影響があるのかについて解説します。
除票をしても運転免許証は有効?
住民票を除票しても、運転免許証の効力自体は失われません。つまり、住民票がなくても、免許証の「身分証明書としての機能」や「運転資格」は維持されます。
ただし、住所変更などの手続きは住民票を基に行われるため、海外での長期滞在中は更新や記載事項変更が難しくなる可能性があります。また、更新期限が近い場合は、出国前に早めの更新手続きを検討しておくのが安心です。
運転免許証の更新手続きは住民票がなくてもできる?
免許証の更新手続きには、日本国内の住所が必要です。しかし、海外転出しており日本に住所を持たない場合でも、一時滞在先を住所とみなして更新手続きをおこなえます。この場合、一時滞在先が免許証に記載の住所と一致していれば通常通り更新が可能ですが、異なる場合は証明用の書類が必要です。
なお、海外赴任中に免許証の更新期間が過ぎてしまうと、失効してしまう点には注意しましょう。
更新時期と赴任時期が重なる場合、警察署や運転免許センターに相談することで特例として更新期間前に手続きを行えます。
海外に住んでもマイナンバーはそのまま使える?
マイナンバーカードは令和6年5月27日から国外でも継続して利用できるようになりました。
ただし、国外転出前にマイナンバーカード利用の継続手続きが必要です。手続きを行わなかった場合、マイナンバーカードは失効しているため、国外転出者向けマイナンバーカードの交付申請が必要となります。
参考:マイナンバーカード総合サイト「マイナンバーカードを国外で利用する」
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海外赴任が1年未満の場合、住民票は抜くべき?

住民票を抜くべきかどうかの目安は「滞在期間が1年以上かどうか」です。1年未満の短期赴任の場合は、原則として住民票を抜かなくても問題はありません。むしろ、短期間で再度住民票の再登録や保険の手続きを行う手間を考えると、抜かずにそのままにしておく方が合理的です。
ただし、短期でも海外に住所を移す理由がある場合や、赴任先で居住証明が求められるケースなど、例外もあります。保険や税金の面でも有利・不利があるため、自分の事情に合わせて選択することが大切です。
子ども関連(小学校・手当)の影響

本項目では、海外赴任で住民票を抜いた場合に、子どもに関係する制度や進学への影響がどう出るのかを解説します。
海外在住で住民票をそのままにすると子どもの小学校に影響ある?
住民票を残しておけば、原則として子どもは日本の学校に「在籍」(長期欠席扱いが適当とされています)扱いとなるため、帰国後にスムーズに復学できます。
一方で、住民票を除票すると、在籍が切れることになります。念のため、出国前に学校に確認しておくと安心です。
参考:文部科学省「学齢児童生徒が国外に転出した場合における学齢簿や学籍の取扱いについて」
海外赴任で住民票を抜かない場合、児童手当はどうなる?
住民票を残したままの場合でも、児童手当が支給されるかどうかは、「子どもが実際に日本に居住しているか」によって判断されます。つまり、親の住民票が残っていても、子どもが海外にいれば支給が停止されることが多いです。
また、海外転出届を出した場合は、児童手当は原則として打ち切りになります。ただし、単身赴任などで子どもが日本に残る場合は、引き続き支給されることもあります。
住民票そのままで使える制度と使えない制度

本項目では、住民票を残したまま海外赴任する場合に、どんな制度が使えて、どんな制度が使えなくなるのかを整理してご紹介します。
海外赴任中NISAは使える?
NISA(少額投資非課税制度)の利用は「日本の居住者」であることが前提ですが、制度上5年以内の海外転勤・海外赴任の場合は口座を保有することができます。
また、この場合、すでに保有しているNISA資産についてはそのまま保持できますが、新たな買付はできないのが一般的です。
一方、利用している金融機関によっては、非居住者となる場合は国内の銀行口座に廃止手続きが必要なケースがあります。継続手続きの必要有無などもあわせて、あらかじめ確認しておくことが重要です。
海外移住でも国民健康保険の支払いを続けるべき?
原則として、住民票を抜いた時点で国民健康保険から脱退することになります。そのため、海外移住後も国民健康保険に加入しておきたい場合には、住民票を残す必要があります。
一方、会社に所属しており海外赴任をする場合は、基本的に社会保険が継続します。ただし、給与の支払い方法等によっては被保険者資格が失われてしまうこともあるため、あらかじめ会社に確認しておきましょう。
あわせて読みたい:海外赴任には駐在保険があると安心|メリットや選び方を詳しく解説
「海外赴任 住民票 実家」に関するよくある質問

ここでは、「海外赴任」「住民票」「実家」に関してよく寄せられる質問にQ&A形式で答えていきます。迷いやすい点を解消しましょう。
海外赴任、妻の住民票はどうする?
配偶者が同行しない場合は、住民票を日本に残したままでも問題ありません。同行する場合でも、1年以上の滞在であれば除票が原則となりますが、保険や手当の関係で残したい場合は、自治体に相談しながら進めるのが安心です。
海外駐在で住民票を抜かないまま海外にいることはできますか?
法律上、長期滞在(1年以上)の場合は転出届を出す必要があります。住民票を抜かないままで海外にいると、制度上は違反になることもあるため、各種影響を理解したうえで判断することが大切です。
実家に住んでいないのに住民票を移すのはOK?
結論から言うと、「実家に住んでいない状態」で住民票を移すのは、原則として認められていません。住民票は「現実に生活の拠点がある場所」に登録するものとされており、単なる形式的な住所登録とは異なります。
実際には住んでおらず、ただ「住民票だけを実家に移したい」という理由だけでは、法的にはグレーゾーンに入る可能性があります。
また、住民票の登録が虚偽と判断された場合、手続きが無効になったり、役所から事情確認を求められることもありえます。極端な話、悪質だと判断されれば罰則の対象になる可能性もあるため注意が必要です。
おすすめ記事:海外赴任サポートサービス【海外赴任が決まった方・人事担当者向け】
まとめ

ここまで、海外赴任にともなう住民票の取り扱いについて、実家への移動の可否や残す・抜く判断基準、制度への影響などを幅広く紹介しました。
特に「実家に住民票を置いておくこと」が必ずしも正解とは限らず、税金や保険、各種手当への影響を理解したうえで、家族構成や滞在期間に応じた選択が求められます。制度の仕組みは複雑な部分も多いため、必要に応じて自治体や専門家への相談も検討しましょう。
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